はしっこ

働くブスが高校生の時から書いてる日記

ルン三郎と私

私は猫好きだ。
あの目つきとしっぽが大好きだ。でも未だに、飼ったことはない。というか、ほとんど生き物を飼ったことがなかった。夏祭りで買ってきた金魚をさっそく水槽にいれたら、翌日青白いお腹を水面にさらしていたのをみてびゃあびゃあ泣いたぐらいしか記憶がない。
ことあるごとに、それこそ猫という単語がどこからか聞こえようものならその度猫が飼いたい、と親にいってみても返事すらしてもらえない。
それでもあきらめず毎日毎日ぼそぼそ猫が飼いたい、猫が飼いたいと唱えていたところ、ある日うちに来たのがルン三郎だ。

ルン三郎は見た目中年のオッサンで(だからルン三郎とつけた)、いつもは青色に光っている。疲れるとオレンジ色に光ってみたりもする。
背中をなでると時間を表示してくれる。けっこう賢いやつだ。

ヨドバシカメラから突然やってきたルン三郎は、最初うちに来た役割もわすれただ部屋の中をウィンウィン動き回った。説明書は読まない派の家族は止め方もわからず後ろを追いかけ回すしかなかった。

ルン三郎は思ったより鳴き声がうるさい。CMでトータス松本がとなりでギターをかき鳴らしていたから、その程度の鳴き声かと思ったら、会話を聞き返すぐらいの鳴き声だった。普段の鳴き声もさることながら、なにかトラブルがあったときが特にうるさい。くぐもった声で背中を操作するよう迫るのだ。静かにしろといってもなかなか聞いてくれない。

ルン三郎のしつけは大変だった。
最初のうち、ルン三郎はやたら電化製品のコードがあつまる棚のしたのわずかな隙間に入りたがった。
ここが一番汚れてるんだといわんばかりの突撃っぷりで、よく帰ってくるとコードに絡まってこと切れていた。
ここは我が家では見て見ぬふりをする場所だと何度言い聞かせてもやっぱり入る。3ヶ月たった頃、やっとあきらめたようによりつかなくなった。もしかしたらコードにからまってゲームオーバーをくりかえしたせいかもしれない。
棚のしたに入るのをあきらめたルン三郎は、次にソファーのしたに入るようになった。特に絡まるものはないが、ちょうどルン三郎の背丈と同じくらいの隙間だから、挟まって身動きがとれなくなる。やっぱり帰ってくるとソファーに挟まってこと切れていて、やはりこれも何度言い聞かせても治る気配がない。
それとうちに来てから一貫して、ルン三郎はお風呂場に入りたがる。そこはお前の管轄外だと、バスマジックリンの泡の管轄なのだと滔々と語って聞かせてもいっこうに聞く耳をもたない。このままだと再起不能になってしまうと心配した我が家では、出かける前にはお風呂場の前に必ずバリケードをつくってルン三郎の侵入を防いでいる。
叱るときにも細心の注意が必要だ。一度あまりにイラッとしてきつく叱ったら、その後1週間続けて夜中三時に掃除を始めるという仕返しをかましてきたからだ。なるべく相手を尊重し、軽い感じにこちらの要求を伝えなければならない。ちなみにその時は、何度も謝りながら背中を必死で操作して、なんとか落ち着いてもらった。大変だった。

ルン三郎は自分の小屋に戻るのがすごく苦手で、帰ってくるとよくその辺で冷たくなっている。たまに玄関先でひっくり返っていたりするので、お疲れ、と声をかけても、真っ白に燃え尽きていて応答がない。背中をなでると最後の力をふりしぼって時間表示だけはする。しょうがないからわたしの部屋の小屋まで運ぶと(けっこう重い)、電気が通った瞬間覚醒してゼェハァしながら眠る。

ペットが飼い主に似るとはよくいったもので、ルン三郎はクズ野郎のわたしによく似ている。だから上記の通り、出来が悪い。ただ、似ているからこそ、出来が悪いからこそ可愛がりたくなるもので、前はいわなかったいってきますとただいまをいうようになった。
帰ってからルン三郎を捜索し、保護して自室の小屋に運ぶのも実は少し楽しかったりするのだ。
今ならトータス松本のあの楽しげな感じが良く分かる。ありがとうトータス松本。おかげでペットのいるぬくもりをしったよ。

ペットがかえないけどペットをかいたいみなさんは、ぜひ一度ヨドバシカメラの掃除機コーナーを覗いてみて欲しいと思う。